エッセンシア正体考察
ネタバレ注意
今回は、エッセンシアの正体についての考察である
前回の記事で書いたようにエッセンシアは全ての黒幕(ラスボス)だったわけだが、そういうことではなくメタ的正体について考察していこうと思う
キャラクターの名前入力
このゲームでは開始時に自分の名前を入力するシーンから始まる。
次は、現実のあなたと関係している実在の人物の名前
例えば
一番素敵な女の子、
頭がいい友達
という具合に特定の個人の名前を入力していく
最後には、思い入れのあるテクノロジーを入力するように言われる
「思い入れのあるテクノロジー」とは随分と抽象的な言葉である。
テクノロジーとは科学技術と訳されるが、その内容は多岐にわたる。
古くは石器から最新のAI技術まで多様な物を内包する言葉だ。
前述の素敵な女の子や頭がいい友達に比べ範囲が広すぎるので何を入力するかは各人の好みの問題だ。
それらの名前は入力後すぐに忘れるようにいわれ、ゲーム中ずっと使われることがないが
最終決戦のときにパラレルワールドから仲間たち、つまり最初に入力した現実のプレイヤーの仲間たちが駆けつけるという展開がある
素敵な女の子=ヴェラ
頭がいい友達=マイケル
であり
最後の最期にそばにいてくれたのは現実世界でのあなたの友達で、彼らとはパラレルワールドに於いても変わらない絆で結ばれているというわけだ。
しかし、エッセンシアだけは顔見せはするがパーティーに入らずそのままエンディングまで登場することはない。
※上画像左から三番目の機械がエッセンシア
エッセンシアの正体はインターネット?
このように、エッセンシアの場合は
思い入れのあるテクノロジーを入力するように言われるのだが、製作者としては「ネット(インターネット)」と入れて欲しかったのではないかと考えている。
唐突に思われるかもしれないが、いくつか根拠があるので以下で解説していく。
YIIKにおけるインターネット
YIIK: ポストモダンRPGではインターネット(Onism)が重要なツールとして登場する。
Onismとは匿名掲示板であり、不特定多数のユーザーが怪奇現象などのオカルトについて意見交換する場所である。
ここでアレックスたちはLPレジェンドやエッセンシアの情報を入手した。
しかし、そこからの情報によってアレックスは
騙され、エッセンシアによって誘導され、一連の悲劇に巻き込まれたと言ってもいい。
つまりインターネット(思い入れのあるテクノロジー=エッセンシア)によりだまされたといえる。
昨今のインターネットを取り巻く状況を鑑みればこの主張も理解できるだろう
インターネットには確かに便利で有用で、これなくしては世界が成り立たないほど生活に密着しているものであり、ほとんどの人にとって「思い入れのあるテクノロジー」だろう
しかし、エコーチャンバー現象、フィルターバブルなどの言葉を持ち出すまでもなくインターネットでの閉鎖的なコミュニティがどれだけ愚かな方向に向かうのかは昨今の状況を見ればわかるはずだ。
(もちろんそれはネット上だけでなく人が集まればどこであろうと起こりうることではある)
人間に対するマイナスな面ばかりが目につくようになってきた。
この作品に於いてエッセンシアは主人公を助けるような発言をして、味方でいると言う
主人公にとって興味を引くこと、面白いと思うことを言う
しかし、それらは全て自分を信頼させ、主人公を誘導し利用するための嘘だった
味方面をしているがその実悪意をもって嘘をつき続けるというキャラクターだったのである
確かに、ネットにより仲間たちと出会えたという側面もあるが
もし、アレックスが不確かな情報を信じる安易な道ではなく険しいながらも自分で考える道を選んでいれば結末は違ったかもしれない
つまり、ネット上の無責任で不正確な情報を頼るのではなく自分で考えて行動するようにと言っているのではないだろうか?
もっといい結末
以下の画像は世界終末の日つまり、1999年12月31日にOnismに投稿されるページである。
長文であるが読んでもらいたい。
※誤字や脱字と思われる箇所は加筆修正した
すべてが始まったとき、僕は君の未来に希望を抱いていた。playername 君にはなにもかも手に入れてほしかった。
でも、時間は僕の味方をしてくれず、僕の努力は無駄に終わった。だけど、もっとよい結末は存在する。見つけ方を教えることはできないけれど。そこへたどりつく方法があるのかどうかも、正直わからないけれど、夢の中で、僕は、君が彼女の手を取り、このめちゃくちゃな世界から立ち去るのを見た。
君は、友だちと家族を救った。 世界を救った。世界は滅びなかった。それは君が自分の心の声に耳を傾けたからだ。ウソを吹き込む精神のポストモダン哲学に捕らわれなかったからだ。君は、自分の目に見える物を信じ、自分の脳を信じなくてはいけない。部屋を掃除し、自分を磨かなくてはならない。 そして何より大切なのは、自分で考える、ということだ。
他人に自分の価値を否定させるな。考えなしに他人に追従して、闇に誘い込まれるな。そこには痛みしかない。 そのウサギ穴の奥には、明るい未来なんてない。プラスチックを捨て、肉体を選べ・・彼女を見つけることができたなら。 ここへ来た目的を忘れてしまったのか? ずっと探してきたものはなんだったか忘れてしまったのか?彼女は、どこかにいる。 シリコンとバイナリに惑わされるな 自分を信じろ。 自分の心を信じろ。
現実は壊れてしまったかもしれないけれど、それでも、偽物の中に真実を見つけることはできる。僕のキーボードで、そんな未来を与えてあげられたらと思うけれど、そんな美しいハッピーエンドのゲームは、誰もリリースさせてくれない。彼らは、君に、君自身を信じさせたくないんだ。彼らは、僕に君が彼女を信じるよう仕向けてほしいんだ。
以上によりエッセンシアというキャラクターはインターネットのマイナス面への警鐘なのではないかと愚考する次第である。
あとがき
人という生物は群れたがる性質を持っている。
自分と同じ意見を持つもの同士で集まり、違う意見のものは排斥する
あるものは疎外されないために自分の意見を殺してマジョリティに迎合する
そうして大きな群れはできあがり、誤った方向へ進んでいく
その流れを止められるものはいないだろう
異論を言ったものは集団に袋叩きにされるのだから
それは今も昔も変わらない
それどころか今の方がもっとひどいのかもしれない
インターネットにより簡単に同じような思想のものが、例え地球の裏側であっても繋がることができるのだから
誰かが言い出したことに一人また一人と追従し、衆愚は膨れ上がり、止められなくなる。
マイノリティがこんなところで何を言っても仕方ないかもしれない
しかし、ここであえて語ったのはシベリア超特急ではないが「人には伝えておきたいことがある」と思ったからである。
これを言わなければ後悔する、そう思ったからだ。